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血尿、背中の鈍痛で膀胱がん。膀胱全摘除術とロボット手術が保険適応に!

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【膀胱がん データ】

推定患者数 約2万800人(2018年)

かかりやすい性別 男女比は3対1。男性に多い

かかりやすい年代 60代後半以降

主な診療科 泌尿器科

主な症状と対処

多発・再発しやすいのが特徴 血尿が出たら泌尿器科を受診

主な症状 血尿、排尿時痛・頻尿などの膀胱刺激症状。進行すると水腎症を起こし背中の鈍痛があらわれることも

主な治療 経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR‐BT)+膀胱内注入療法(抗がん剤、BCG)、膀胱全摘除術+尿路変向術、薬物療法、放射線治療

推定患者数が2万人を超える膀胱がん。膀胱内にがんが多発し、再発しやすいことが特徴で、進行すると膀胱全摘除術が必要となる。

膀胱はおへその下あたりにある臓器で、尿をためる・排泄する働きをもつ。内側は「尿路上皮」という粘膜でおおわれている(イラスト参照)。膀胱にできる膀胱がんは、尿路上皮ががん化したものが90%以上を占める。男女比は3対1で男性に多く、最大のリスク要因は喫煙だ。

そのほか、家族歴、膀胱がんの発がん物質にふれやすい職歴などが関係すると考えられている。しかし、藤田医科大学病院の腎泌尿器外科主任教授の白木良一医師は、男性に多い病気と思い込むことは危険だと話す。「最近、喫煙歴や家族歴がない70代、80代の高齢女性に発症するケースが増えているからです」多くは血尿で発症に気づく。

そのほか、排尿時痛、頻尿などがあらわれることもある。膀胱内に多発しやすいことも特徴だ。膀胱がんが疑われたら、尿細胞膀胱内に多発しやすいことも特徴だ。膀胱がんが疑われたら、尿細胞診検査、膀胱鏡検査、腹部超音波検査などがおこなわれ、診断の確定には、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR‐BT)を用いる。尿細胞診検査では、尿中にがん細胞があるかどうかを調べる。膀胱鏡検査は直接膀胱の中を見ることができるので、診断には有用だ。通常は、外来で、ゼリー状の麻酔薬で尿道に麻酔をかけ、軟性鏡を挿入しておこなわれる。

「痛みはほとんどありませんが、なかには恐怖心をもつ患者さんもいます。また、検査後に血尿や発熱がみられることもあって、患者さんにはある程度、負担になります。超音波検査で腫瘍のようなものがあれば95%以上膀胱がんと考えられること、そのあとのTUR‐BTでがんかどうかを確定できることなどから、最近は膀胱鏡検査を省略するケースも増えています」(白木医師)

TUR‐BTは診断・治療にもなる

TUR‐BTは尿道から内視鏡を挿入、膀胱内を見ながら、がんを電気メスで切除。組織を採取して、がんの性質や進行度をみる。低リスクの膀胱がんであれば、TUR‐BTでがん細胞を切除し、取り切れればその後の治療が不要になることもある。したがって、がんを残さないことが重要になる。肉眼では見つけにくいがんを見極めるために、蛍光物質を用いた検査もおこなわれる。従来の狭帯域光観察(NBI)という方法に加えて、2017年にはより精度の高い光力学的診断(PDD)が保険適用になり、徐々に普及してきている。膀胱がんはがんの性質や進行度によって、TaからT4に分類される。筋層に浸潤しているかどうかで低リスク(Ta)、中間リスク(T1)、高リスク(T2以上)に分けられる。がん細胞が筋層に達すると、筋肉内の豊富な血液によって、容易に転移してしまうため、浸潤の有無が重要なポイントだ。「膀胱がんには上皮粘膜の下を這うようにして増殖する上皮内がん(Tis)という、一般的な上皮がんに比べて悪性度が高いものがあります。Tisは筋層に浸潤していなくても、高リスクとされます」

Ta、T1についてはTUR‐BTによるがん切除が治療の第一選択になる。TUR‐BTののちに抗がん剤を膀胱内に注入し、再発リスクを下げる。

 T1で悪性度の高いもの、Tisについては、TUR‐BT後、ウシ型弱毒結核菌(BCG)を膀胱に注入してがんの再発を予防する。

 T2以降のがんでは、リンパ節や周辺臓器(尿道、前立腺、子宮など)へ転移する可能性を考慮して、膀胱全摘除術が検討される。転移が多ければ、薬物療法がおこなわれる。

ロボット手術が18年保険適用
2018年にはダビンチによるロボット支援手術が保険適用となった。

膀胱全摘除術は、男性なら膀胱のほかに前立腺、尿道、リンパ節を、女性なら子宮、卵巣、リンパ節を切除するのが基本だ。

膀胱を全摘すると、新しく尿路をつくる尿路変向術が必要になる。もっとも多くおこなわれているのは、回腸(小腸の一部)を尿管につなげる「回腸導管造設術」だ。排尿は皮膚につくった排泄口(ストーマ)を介し、ストーマには尿をためる袋をつける。

現在実施されている手術は、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術の3種類で、開腹手術がもっとも多い。ダビンチによるロボット手術は、前立腺がん全摘術、腎がん部分切除に続いて、18年に膀胱がん全摘除術にも保険適用となった。

開腹手術の手術時間は8~10時間、入院期間は約3週間、出血量も1千㏄以上で傷も大きく、患者の負担の大きい手術だ。腹腔鏡手術はより負担の小さい手術で、膀胱切除・摘出までを腹腔鏡下で、尿路変向術は開腹しておこなう。

ロボット手術は腹腔鏡手術と同じように、おなかに直径8~30㍉程度の穴を6ヵ所開けて鉗子を挿入する。尿路変向術も開腹することなくおこなえる。

東海大学病院泌尿器科診療科長・教授の宮嶋哲医師は次のように話す。「腹腔鏡の鉗子には関節がなく、尿路変向の細かい手技は不可能でしたが、ロボット手術では鉗子の先が自由に曲がるので、尿路変向術までの全工程、腹腔内での手術が可能になりました」

そのため、出血量は100㏄程度と格段に少なく、手術時間は5~6時間に短縮された。入院期間は約2週間だ。ロボット手術の合併症として、腸閉塞や感染症、深部静脈血栓症などがあるが、頻度は高くない。また、手術中は頭部を30度下げる形になるため、緑内障のある人は症状が悪化する可能性がある。

ロボット手術は保険適用からまだ日が浅いため、実施している病院はそれほど多くない。しかし今後は普及が進むだろう。「血尿は継続しないことが多いので、つい放置しがちですが、油断せず、泌尿器科を受診してください。早期発見であれば、膀胱全摘を回避できる可能性が高くなります」(宮嶋医師)

藤田医科大学病院

副院長・腎泌尿器外科主任教授 白木良一医師

東海大学病院

泌尿器科診療科長・教授 宮嶋 哲医師

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